なんにもなかったな・・・
喰いタンのサントラが出たら買ってしまいそうな自分がいる・・・
でも出るのかな。あれほとんどクラシックのリミックス?だよなー。
***本日の小劇場~所変われば~
ある日、趙雲が孔明の部屋を訪ねると、めずらしい客があった。
「ああ趙将軍、ちょうど良い、将軍もご一緒にどうか」
客の前であるため、孔明の対応も若干かたい。その孔明の向こうで、日焼けした精悍な顔立ちの男が軽く頭を下げた。
馬超である。
この軍に降ったばかりのこの猛将は、あまり蜀の人々と馴染めていないようであったが、たしかにどこか近寄りがたい雰囲気があるのは、やはり羌の血を色濃く受け継いでいるからであろうか。
「今、馬将軍に異民族の食物について聞いていたところなのだよ」
「食べ物・・・」
趙雲は苦笑した。
「このあいだは枯れた土地でもすぐに育つ蕪を育てるのだと意気込んであられましたが・・・どうやらわが軍師は食に対してずいぶんご執心のようだ」
「なにをいうか」
孔明がずいと身を乗り出して言った。
「人は国の基、食は人の基ぞ、異民族の兵たちが、まこと蜀の用意する食事で本領を発揮できるかはわからぬではないか」
「・・・続けてよろしいかな、軍師」
静かに馬超に遮られ、孔明はあ、と呟いた。思わず、子龍とふたりっきりの時と同じ調子になりかけていた。
「失礼、続けてくれ」
孔明が居住まいをただすと、馬超が懐から包みを取り出した。包みを開くと、うす黄色い塊が顔を見せた。
「――これが羊の乳を発酵させたものでござる、脂肪分や栄養素が豊富で、放牧民族はよくこれを使いまする」
「ほう」
孔明がうす黄色のかたまりのさきっちょを指に取り、ぺろりと舐めた。
「・・・あまり旨いものではないな」
「まあ、そのまま舐めることはあまりございませんな、料理と煮込んだり、饅頭につけたり、茶に入れることも」
「茶に?」
孔明が眉をしかめた。
「茶とは料理で脂っこくなった口を洗うために飲むものだろう?こんなものを入れたら、よけいに脂っこくなるのではないか?」
「さあ・・・」
馬超が軽く腕を組んで、空を眺めてから言った。
「特に、おかしいと思ったことはございませんが」
「ふむ・・・」
孔明も、顎をさすって考え込む。その隙に趙雲もうす黄色の塊を舐めた。いかにも、動物性の脂といった味であった。
「・・・まあ、所変われば食も変わるものだ、私なんかは北方の生まれであるから、米ばかりの蜀にいると麺(小麦製品の総称、ウドンやラーメンのみを指すわけではない)が恋しくなってな、麺が食いたい麺が食いたいといっていたら、細君が勝手に麺を打ってくれる機械というものを作ってくれて・・・」
「軍師、」
趙雲に遮られ、孔明はやっと己の失言に気付いた。馬超のほうを見やると、馬超は茫とした目を遠くに向けていた。
馬超には、もはや共に故郷を懐かしがるような妻はいないのだ――
孔明がかける言葉を捜していると、馬超はふ、と苦笑した。
「おお、場を白けさせてしまったようだ――申し訳ないが、ここで失礼させてはいただけまいか」
「あ、ああ――」
そのままがたりと立ち上がると、馬超は礼を取ることもなく去っていった。
孔明は、馬超の残していった羊の油を、もう一度舐めた。この味には、一生慣れることはない、と思った。
「――子龍、」
「はい、」
「私は、お前に出会った」
「さようでございますな」
「――彼も、誰かに出会えると良い――」
趙雲が、無言で孔明の頭を撫でた。
***
茶に・・・入れるんだよね?たしか・・・(うろおぼえ)