日記
休み。
七夕でしたね。
今年も晴れなかった・・・どころか、台風来てますね(笑)
今年初めて、七夕にはそうめんを食うということを知ったので昼も夜もそうめんを食べました。
まさかのイトノコ生活。
***本日の小劇場~年に一度の~
「年に一度で、よく続きますな」
「年に一度ていどだから、続いているんだよ」
上機嫌の孔明に対し、ささやかな嫌味を言ってみたが、ほがらかにかわされる。心なしか頬が上気しているが、酒は飲んでいない。孔明はこの日に、酒は飲まない。
七夕。
天上に輝く恋人たちが年に一度だけ会うことを許される日、下界では夏間に湿気を吸った書簡を虫干しにする。
孔明は所有する竹簡が多いため、外だけでは虫干しする場所が足りず、室内まで竹林のごとき密度である。
その中で真新しい竹簡を、孔明はもう一度読み始めた。
仕事用の物ではない。政治論が書かれたものでもない。
何かの報せでも、陳情でも、なんでもない竹簡を、孔明は何度も何度も読み返していた。
竹簡の差出人は、趙雲もよく知る人物である。
「――元直どのも、まめなお方ですな、一年分の出来事を、貴公のために書き溜めておられるのか」
徐元直。
孔明の兄弟子であり、劉軍の軍師であった男である。
「書き溜めていたらもっとすごい量になっているだろうよ」
無邪気に笑いながら孔明は竹簡をかるく振った。
「とにかく徐兄もご家族も息災そうだ」
「まあ――なによりですな」
どうしても口調が刺々しくなる。別に趙雲は、徐庶に対して悪い感情を抱いているわけではない。劉軍にいる間はよく働いてくれていたと思うし、騙す様な形で魏に引き抜かれ、挙句に母を失った彼に対して、むしろ同情している。
書簡の内容も、旧友に当てた他愛もない近況ばかりだと知っている。孔明と徐庶は、年に一度だけ近況を送りあうことにしているらしい。互いの立場を思えば、会うことは勿論、頻繁な書簡のやり取りも命取りである。
それゆえ年に一度だけ、一年分のことを書簡で送りあっているのだ。
――とはいえ、年に一度の恋人たちの、逢瀬の日にあわせる必要はあるまいに――
ざわつく心をできる限り抑えながら言うと、悪友同士の悪い冗談のようなものだ、と悪びれもせず返された。
「――何度も読むほど、おもしろいことが書かれているのですか」
「おもしろいよ」
孔明は即答した。
「たとえばこことか――
書き物をしているときに、息子に明かりを強くしてくれと頼んだ、すると息子は『精進いたします』と答えた、びっくりして、急にどうしたと聞くと、『だって、父上が聡明になりなさいとおっしゃったから――』と、こうだ。
たった七つなのに、息子はいつの間に韓子を読んだのだろう――」
くすくすと、さもおかしげに読み上げるが、なにがおかしいのか趙雲にはさっぱりわからない。
孔明は普段なら、趙雲が理解できなさそうな話題は避ける。あるいは、「なるほど、おもしろい」と思えるように丁寧に説明をしながら話す。それができないほどに、旧友からの手紙に舞い上がっているのだ。
いまいましいを越して、なんだか消沈してきた。孔明と、自分よりも長い時間を共に過ごした男。悲運にも、黄河というおおきな川を隔てて離れざるを得なかった男。離れたからこそ、彼の中で美しい青春の思い出になっている男。そして、年に一度の書簡だけで、彼をこんなにも喜ばせる男――
――かなわない。
「――それがしどもも、逢瀬は年に一度ていどに致しましょうか」
「いやだ、」
表情を改めて言う孔明に、趙雲のほうが驚いた。普段、このていどの嫌味を軽く口にするのは、むしろ孔明のほうなのだが――
「嫌だ、年に一度きりだなんて――年に一度しか会えぬとなれば、私は七夕ならずとも催涙雨を流すであろうよ」
まっすぐな目で情熱的な言葉を吐く孔明に、趙雲はたじろぎつつ言った。
「――何と言うか、本日はずいぶんと素直ですな」
「だって――」
孔明が、わずかに頬を膨らませて言った。
「今日は、七夕だ、年に一度しか会えぬ恋人たちに、それが本当の願いだと思われたら困る」
「ああ――確かに」
趙雲は苦笑した。
「なれば――それがしも素直になりましょうか――」
言うが早いか、孔明の手首をつかむと、強く引き寄せた。
――おれの前で、『これ』を読むな、
かしゃり、と軽い音を立てて落ちた竹簡は、虫干ししていた竹簡に混ざり、そのまま捨て置かれた。
***
徐庶:「俺をホモの当て馬にすんの、マジやめて」
前日の仕事中、「七夕」で検索した結果の妄想でした。
徐庶の微妙な存在感は、べっべつに月妹へのサービスとかじゃないんだからねっ!
ちなみに趙雲同様、徐庶の手紙のオチがよく分からないという方は
ttp://ameblo.jp/yk1952yk/entry-11346657378.html(無断)
この辺とかを参考にしてください。
「矛盾」もそうだけど、『韓非子』は政治哲学を書いたものなのに、ときどき『徒然草』みたいなニヒルな笑い話があるよね。だから面白いw