赤裸々日記

日記
いろいろあったけど、私は元気です。

・・・うん、まあ、開き直ることにしますた。





今日は夜勤前でだいたい寝てました。
現在夜勤中。3月分だけ日記かいたでー。
今日は小劇場もするでー。


兼私信
えっ、救援コールなんてしたっけ?
・・・(日記確認)

してたわー(ミサワ絵で)

あのー、アレですね。疲れてるときの日記ってアレなことになりますよね。
でもノってくれたのでラッキーwありがとうww



















***本日の小劇場~はじめてのおつかい~

「鮑清の妻は無罪ではないのか」
 頭を下げていた初老の文官は、自分よりもはるかに若輩の男に言われたことの意味がわからなかったらしく、は?と顔を上げた。
「この三つ目の案件だ、鮑清の妻は、無罪ではないのか」
 竹簡を広げて指で示す。文官はその付近を素早く黙読した後言った。
「ああ、これは――妻もまた盗んだ金で物を買い、飲み食いしたためでございます、盗みの実行犯は鮑清にございますが、その金を使ったものは共犯者扱いとなるのでございますよ」
 文官が苦笑して言う。まるで、自分の子供を諭すように。
 しかし、若い男の顔色も声色も、まったく変わらなかった。
「調書をよく読め、いいか、まず鮑清は職を失った、しかしそのことを妻子に言えず、空き巣をして小金を手に入れていた、妻はその金で物を買い、飲み食いしたと――」
「は、はあ――そのように記載がございますな」
「なればその妻が、夫の持ってくる金を、盗んだ金だとは知る由もあるまい――お主は盗んだ金を使ったために共犯だと言ったが、共犯扱いになるのは妻がその金を、盗んだ金だと知っていた場合であろう」
「それは・・・それは、その――」
 文官の額から、どっと汗が噴出す。顔を真っ赤にし、そわそわと視線を泳がせてから、搾り出すように言った。
「その――申し訳ございませぬ、担当のものに確認を――」
「いらぬ、わしは、刑吏の束ねたるお主に訊いているのだ」
 追及の言葉は容赦がない。文官は、そのう、とだけ言うと、そのまま言葉を失ってしまった。
 若い男は、溜息とともに言った。
「――他にもいくつか疑問に感じた案件が散見される、本日中に見直し、再提出せよ――よいな、本日中だ」
「はっ、はい――!」
 文官は虎にでも脅されたかのごとく震え上がると、ばたばたと無様な音を立てて駆け出していった。
 若い男はそれを横目で見送った後、今度は別の文官に言った。
「お主には、先日の城壁修繕のことを訊きたい」
「城壁修繕――ということは、四月前に終了した工事のことですな」
「左様、その際にお主が李より仕入れた、木材の値段だが――」
 男は新しい竹簡を開いた。
「試しに付近の木材を取り扱っている商人に見積もりを出させたところ、十件中十件がこの値の半値以下の値段を示してきたぞ、手間賃や人件費を入れたとしても、異常な高値ではないのか、なぜ李のところから買いあげたのだ」
「それは勿論、李の商品には信用がございますから」
 文官はおだやかに言った。
「南方の、丈夫ですが加工しやすい木を取り扱っております、値が張るのは、遠方から運んだ良木ゆえ――百姓の暮らしを守る城壁には、多少無理をしてでも良い材を使用すべきでしょう」
「お主の言は尤もである、ところで――」
 男が、今度は絹布を差し出す。
「つい今朝方に、同じ場所が崩壊したそうだ、再び修繕が必要である、なるほど、『よい』材木を使ったようだな」
「それは城内で龍が暴れまわっておりますゆえ、いたし方ございますまい」
 ――狸め、いけしゃあしゃあと。男は胸中で毒づいた。
「――再び修繕の手配をするように、その際に相場よりも高価な材料を利用するのであれば、必ず理由を含めて報告せよ、百姓を守るために必要とはいえ、その金の出所は百姓の血税なのだということを忘れてはならぬ」

 己に与えられた私室に戻ると、男――趙雲は深い溜息をついた。
 張飛と八百長じみた籤まで引いて手に入れたのは、先鋒の名誉と――腐りきった内政である(あと、やたらと色目を使ってくる未亡人)
 ――これは、あの方も苦労なさったのであろうな――
 趙雲は過去に何度も、たまには休みを取れ、人に任せるということを覚えろと叱ったものである。孔明は基本的に、すべての決済に目を通そうとする。ほかの者が帰宅しても、あるいは日が落ちても、あるいは夜を徹してでも。
 今は、孔明の気持ちが痛いほどにわかる。
 毫毛ほどの隙でも見つけたとたんに、私腹を肥やそうとする者がいる。刑吏が罪人を増やすのは、罰金や保釈金や賄賂を手に入れるため。後者も言うまでもない。賄賂を通して李とやらと癒着しているのであろう。横領さえ、あるやもしれぬ。
 ひとまず牽制はできたと思うが――生粋の武将である。いつぼろが出るか――と、これから先のことを考えると気が重い。長坂の死地に於いてさえ、これほどまでに絶望的な気持ちにはならなかった。
(ちなみに趙雲はこの後、「劉備の後宮の取締り」という、さらに地獄のような仕事を任されることになる)
 それでも――
 ――きっと、遣り遂げてみせましょうぞ。
 趙雲は、今は遠く離れて、また別の難題に取り組んでいるであろう恋人のことを思った。

「ご苦労だったな、趙将軍」
 趙雲の、血を吐くのではないかというほどの仕事振りは、実に簡単でありきたりな一言にて労われた。
「見よ、お前が桂陽にいる間に私の元にもいろいろと送られてきたぞ、お前の評価については――大絶賛と、大苦情がちょうど半々といったところか――どうやら、ほんとうに『大活躍』してくれたようだな」
 秀麗な顔が、少しいたずらっぽい笑みをかたちづくる。
「どうだ、私の苦労が少しはわかったか」
「身に染みて」
 間髪入れずに趙雲が言うと、孔明は、おや、と片眉を上げた後、苦笑して言った。
「――すまない、ほんとうに無理をさせてしまったようだね、暫くはお前に向いた、将としての仕事をさせるし、報償は望みのものが出せるよう、わが君にかけあってみるよ」
「別に、報償などは必要ございませぬが――」
 趙雲は苦笑して言いかけたが、ふと言葉をとめると、やがて嫣然と笑って言った。
「――さようでございますな、多忙な貴公の本日一晩をいただきましょうか、愚痴にも酒にも、――――――にも、つきあっていただきますぞ」
 最後の一言は密やかに、耳元に吹き込むように。
 孔明の顔が、見る見る耳まで真っ赤になっていった。
「――疲れているのだろう、一日ぐらい、やすんでからにしたらどうだ」
「おや、つい先ほどの約束を、早速反故になさるか、本当は、今すぐにでもいただきたいほどにございまするが」
 孔明はたっぷりと間を置いた後、人の上に立つものとして、約定は果たそう、と小さく言った。

***

こんなん書いたけど、趙雲の政治力は低いような気がします。
孔明さんの仕事を手伝ううちに、ちょっと覚えたかなという程度。

ちなみに冒頭の「共犯」については、論文を書くときに大変お世話になった・・・もお、ジャンピング土下座でも足りないくらいにお世話になった・・・冨谷至氏著の『秦漢刑罰制度の研究』より。
2千年前の時点でこんな但し書きまでつけるなんて、秦法はやっぱ細かかったんだなあ。
もちろんいい意味で。