日記
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
まずはご挨拶までに。
さて、宣言どおり弾丸で実家に帰ってました。
31日の夜仕事が終わってから帰り、23:30ごろに家を出て二年参りと初湯。
弟のハガレンを最終巻まで読み、朝9時に実家出発(笑)
ダ○エーの初売りに参戦して、昼から寝て今夜勤中です。
無理にでも実家に帰らんと、仕事が毎日なので年を越した気になれない。
さて、年も明けたことだしそろそろ2月の引越しの準備をせんと・・・
***本日の小劇場~新年、お慶び申し上げます~
はあ――と孔明は深く息をついた。
元旦のまつりごとは今のところ順調である。
世の中は爆竹を鳴らしながら盛大にお祝いしているが、宮仕え人は新年行事に忙殺されっぱなしだ。
特に今年は劉備が皇帝として即位したこともあり、格式を改める必要があった。一から十まで右往左往である。
一番痛かったのは暦の作成が遅かったことだ。政府の作成する暦にあわせて民は種をまくので、暦の作成には慎重を期せねばならぬ。万一暦が原因で不作と言うことがあれば、民は二度と皇帝には従わない。
とはいえ、数十年前に捨てた農耕や星のめぐりやら、なんやかやの知識を総動員して、ああでもないこうでもないと夜を徹して議論である。
もちろん孔明の仕事はそれだけではない。さまざまな儀式の段取り、道具、人員、祝詞の作成などを、好かぬ儒学の経典を紐解きながら手配していく。こんなことは丞相たる自分の仕事ではあるまい。
――「おまつり」で天下泰平になるならば、軍師も丞相もいらぬだろう――
もう何日家に帰ってないのだったか。孔明は懐かしい我が家のことを思った。主不在の家では、妻と息子が粛々と祖先氏神を祀りつつ、来客の相手をしているはずである。
孔明は疲労でちかちかする目元をぐっと押えた。玉の埋め込まれた冠が重い。今日はいつものゆったりとした袍ではなく、式典にあわせた朝服を身にまとい、髪を結わえて冠を戴いていた。
今すぐ帯を緩めて、簪を引き抜いてしまいたいところだが、そうはいかない。今はほんの小休止。このあとまだ式典があり、宴がある。
ついでに明日も早朝から別の式典があるので、その準備が必要なわけだが――
「丞相、趙将軍がお見えです」
書童の声に、はっと孔明は我に返った。この大事な日に、居眠りでもしていたのだろうか。
「かまわぬ、部屋に入れよ」
は、と扉の向こうで声がしてから趙雲が入室する。
先に口を開いたのは趙雲だった。
「まずは、新年のお慶びを申し上げます」
「うむ、おめでとう」
そういえば趙雲とも久しく言葉を交わしていなかったな、と孔明は思った。
「実は、ご相談いたしたき事がございまして――」
そこで少し趙雲は言いよどんだ。
「何だ、あまり時間がないので手短に申せ」
はい、と答えつつ、趙雲の表情は曇っている。やがて開き直るように嘆息しつつ言った。
「本日の城内警備の夜勤のものが、正月は家族と過ごしたいので休みたいと――せめて時間を短縮してほしいと申し出ております、しかも、何人も」
「馬鹿なことを」
孔明はほとんど反射的に言葉を返していた。
「正月だからこそ、普段以上に厳重な警備が必要なのだ、酔って喧嘩するものもあれば、お祝いで気の緩んだところを狙った盗賊も出る、とうてい聞き入れられることではない、却下だ、当たり前だろうが!」
「――かしこまりました、そのように申し伝えます」
趙雲は軽く苦笑した。安堵しているようにも見えた。
そも、趙雲ほどの男が、それくらいのこともわからずに安易に孔明に相談してくるはずがない。普通であれば自力で警備のものたちを説得し、率先して巡回する。それも、自分の睡眠を削ってだ。
趙雲だけでは押さえつけられないほどに、兵たちがうわついているのであろう。孔明は、八つ当たりするように声を荒げてしまったことを恥じた。
「――すまぬな、お前にも苦労をさせている」
退出しようと腰を浮かせた趙雲は、二、三度目をしばたいたあと――あろうことか、吹き出した。
「――え、ええ?」
「い、いや、失礼――」
腹を押えてくっくっと笑いながら、趙雲は手を振った。
「ただ、貴公が突然、長年連れ添った夫婦のようなことを仰ったので――」
ながねん、つれそった――
「――なっ!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。一気に顔が熱くなる。まったく他意はなく言った言葉であったのに!
「じ、実はですね、それがしがこちらに参ったのも、兵にこのように泣きつかれたからなのですよ、趙将軍は丞相と仲がよくていらっしゃる、趙将軍が直訴してくだされば、丞相もお聞き入れくださるのではないか――と」
「仲、仲がいいって、私は仕事に私情をはさんだりはせぬぞ!」
「左様でございますな」
趙雲はなおも笑っている。
「では兵にはこのように申し伝えましょうか、夫は妾(わらわ)の願いなどお聞き届け下さいませんでした、と」
「もういい!とにかく兵の訴えは却下だ!さっさと下がれ!」
そのまま孔明はふいとそっぽを向いてしまった。
さすがの趙雲も、からかいすぎたと反省したようである。顔をそらしたままの孔明の手をそっと握ると、言った。
「長く、貴公と共に過ごしてこれたことを、うれしく存じまする」
思いがけず熱い声と手の感触に、孔明はどきりとした。
「許されることならば本年も、陛下と貴公の傍らにありたいと存じます」
なんでそこで陛下を先に言うかな、孔明は思わず笑ってしまった。からかわれたことによる怒りなど、簡単に霧散した。
「そうだな、」
顔はそむけたまま、握られた手を握り返して孔明は言った。
「今年もよろしく、子龍」
***
以上、元旦から夜勤のかんがお送りしました。
今年もよろしくね!(二回目)