李斯のはなし
今日は李斯上書のために李斯列伝を読んでました。あ、ちなみに中華書局の原文で。
すると同じ穴のムジナ、さ君が話し掛けてきました。
さ:「僕は李斯好きじゃないな~、だって韓非子を殺したんだもの」
俺:「何を言っているんだ!殺しちゃう小物っぷりがいいんじゃないか!!」
さ:「そ、そうか・・・!?」
そこから始まる東周語り(笑)やはりマニ屋同士で話すのは楽しいな~、と。
しかし同時進行で列伝を読み進めていると・・・
あ、あれ!?李斯がすごくかっこいいよ!!
二世皇帝を諌めるのに韓非子の名前を使ってるよ!!(殺したくせに/笑)
刑死する直前なんか、諌めまくってるよ!!
しまった!!小物なんかじゃないよ、李斯!!
本命小説での彼の扱いが、ちょこっと変わるかもです(まだ書く気だったのか/笑)
それにしても史記は名文だよなあ・・・
***本日の小劇場~封神三国演義③~
「私から離れよ、子龍!」
凛、と夜気を裂く、雷鳴のような声が響いた。
「いや、私というのもおかしいか、その女・・・でもないし・・・ええいややこしい、とにかく離れろ子龍!」
覚えのある声に我に帰った趙雲は、「孔明」を突き飛ばすと、あたりを見回した。すると部屋の片隅に光のかたまりのようなものが立っている。趙雲がぐっと目を凝らすと、光のかたまりは徐々に孔明の姿になっていった。
突き飛ばされたほうの孔明が、身を起こしながら言う。
「ふん、魂魄のみで生き残ったか、しぶといこと」
「黙るがいい、女狐めが!子龍、お前はこの剣を拾って私についてこい」
孔明が命じると、まだ混乱しているのか、呆然と二人の孔明を見比べていた趙雲ははっと拱手し命を受けた。疑うべくもない。この威厳、この高潔さ、これこそがまことの孔明である。
武人は孔明の下へ駆け寄り、その足元のものを拾った。先ほど狐に投げ飛ばされたものである。棒だと思っていたが、よく見れば剣の形に彫ってあった。趙雲が木剣を拾ったのを確かめると、孔明はふわりと飛び、扉をすり抜けていく。趙雲はあわててそれを追った。
「軍師!」
あるていどまで走り、あやかしが追ってきていないことを確かめると、趙雲は言った。
「何が起こったのでございますか、いったいいづこへ向かっておいでですか!」
「黙ってついて来い、息が切れるぞ」
「軍師っ!」
趙雲が叫ぶと、遠くの歩哨がびくりと反応した。歩哨は遠巻きにこちらを見ているだけだったが、怪しんでいるのは確かである。
ち、と舌打ちしてから、孔明は小声で言った。
「とにかく、人のおらぬところへ、それから太公にお会いする」
「太公?」
太公とは、父のことである。はて、軍師のお父上はご健在であったであろうか・・・と趙雲が首をひねっていると、二人は城のはずれの、大木の場所までやってきた。
孔明はあたりを見回し、人がいないことを確認すると、大声で呼ばわった。
「太公!ご光来くださいませ!」
するとどうであろう、雲ひとつない空であるのに、ばちばちと音をたてて電光が走った。かと思うと、髪も髯も真っ白ではあるが、しっかりと立った背筋と、意思の強そうな瞳は若々しい印象を受ける老人が立っていた。
この人物が、太公?
「申し訳ございませぬ・・・!」
孔明が老人の足元に跪いた。
「あの女狐を仕損じ、そればかりかみすみす体を乗っ取られました」
「ふむ・・・顔をあげよ、孔明」
老人の声はやはり張りがあり、老人らしさを感じさせない。
「貴公――何者だ?」
「馬鹿者、控えよ!」
趙雲がつぶやくと、間髪入れずに孔明が怒鳴りつけた。
「このお方は、周の武王が紂王を討ったときに軍師をつとめられた、太公望呂尚さまなるぞ!」
「・・・!これは失礼を・・・!」
趙雲はあわてて叩頭した。少しでも学のあるものであれば、その名を知らぬはずはない。古の聖王を補佐し、斉の開祖となった人物である。
「あー、よいよい、汝は斉の眷属ではあるまい」
太公望がのんびりと手を振った。
「それよりもこれからのことじゃ、過ぎたことはまあ、いたしかたないとするが・・・しかし困ったのう」
「・・・はい・・・」
「あの」
趙雲がそっと言葉をはさんだ。
「あの狐はいったい、なんなのですか?何ゆえ軍師の体を?」
「子龍、」
「よい、わしから説明しよう」
とがめる口調の孔明を制し、太公望が言った。
「さよう・・・汝、紂王の寵姫、妲己を知っておるか?」
「妲己・・・と申しますと、紂王と、暴虐の限りを尽くしたという・・・?」
「そうじゃ」
太公望はひとつこほん、と咳払いをすると、言った。
「実はその妲己、妖狐が化けていたのじゃよ、いや、正しくは妲己という善良な美女を妖狐が殺し、その体を使って英王紂王を惑わしたのじゃ」
「なんと・・・妖狐が・・・!」
趙雲の脳裏に、先ほどの光景がよみがえる。軍師の首に牙を立て、その体に乗り移る瞬間の――
「そのときは神仙の力を借りて、なんとか妖狐を封じることができた、しかし、いつのまにか封印をといて逃げ出していたようでのう、これはいかんと、わが眷属であるこの孔明に、妖狐の退治をたのんだのじゃが・・・まあ、このとおりじゃ」
「――事は、急を要するのだよ、子龍」
孔明が苦い顔で言った。
「かつて王の寵を利用して暴虐の限りを尽くした狐が、今主君の信を得る参謀の体を手に入れた――狐はどうすると思う?」
趙雲はそこでようやく事の重大さを悟った。この人一人の命の問題ではない。下手をすれば、徐州虐殺以上の惨事にさえ、なりかねないのだ。
「これから・・・いかがなさるのです」
思わず身震いして、趙雲は二人の天才に聞いた。
「できれば穏便に済ませたかったのじゃが――今更そうも言ってられぬ、天界の助けを借りるほかなかろう」
「ではやはり、崑崙に?」
孔明が言うと、太公望はうなづいた。
「孔明も、あまり長く体から離れていては魂魄が分離して体に戻れなくなってしまうからな、一時的にでも仙丹で神鬼を強くしておかねばなるまい」
「というわけだ、子龍」
孔明が、趙雲の目をじっと見つめる。
「私は太公とともに崑崙へ向かう、崑崙とこちらでは、時の流れ方が違うから、こちらでは数週間、あるいは数月となるかもしれぬ――その間、あの妖狐がおかしなことをせぬか、見張っていてほしい」
「承知いたしました」
「先ほどの木剣、まだ持っているな?」
「はい、」
趙雲は懐に入れた木剣を取り出し、孔明に見せた。
「これは仙境に生じた桃の枝からつくった、神剣である、危険が迫ったら、これで己が身を守るといい、それと――」
孔明は一度目を閉じ、わずかに言いよどむような間を作った。
「それと、もしあの妖狐が暴虐に走るようであれば――斬り殺してでも”私”を止めてほしい」
孔明が、趙雲が腰に帯びていた剣の柄に、そっと手を添えた。趙雲は、あまりの任の重さに思わずごくり、と喉を鳴らした。
「――承知いたした、すべて、御意のままに」
「――そうか、よかった」
孔明が、淡く微笑んだ。しばらく、そのまま二人は黙っていたが、ふと孔明がきっと顔をあげて言った。
「そうだ、子龍――先ほどのことだが、お前女狐の術にかかっていたとはいえ、男に誘惑されるとはなにごとだ!」
「・・・え。」
「今後は気をつけよ、でなければ私は安心して軍をあけられぬ!」
「う――」
はい、と趙雲が消え入るような声で何とか返事をすると、孔明はふいとあっちを向いてしまった。
「ほーうう、」
太公望が赤くなったり青くなったりしている趙雲をにやにやと見つめながら言った。
「女狐の術、のうー」
うるさい、
といって蹴飛ばせる相手だったら――趙雲はぐぐ、と喉の奥でうなった。
***
しりやすだったり、ぎゃぐだったり(笑)
あと4回くらいかなー、このペース・・・